愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
25 セラフィニエの過去

「お前は知らないだろう!? お前がいるせいで、セラフィニエがどんな不遇(ふぐう)な目に()ってきたか!お前が生まれる前までは、父親も母親もセラフィニエに期待をかけ、可愛がってきた。だがお前が生まれたせいで、母親はセラフィニエをすぐに見放した。宝玉姫になれない娘になど興味が無いと、乳母に(あず)けきりで、自分は遊び暮らしてばかり……。セラフィニエは、母親の愛情を知らずに育ったんだ!」
 アーベントは、血を吐くように叫ぶ。

「父親は父親で、セラフィニエを見放しこそしなかったが、決して普通の父子(おやこ)のように、純粋な愛情を(そそ)いだりはしなかった。あの男は、娘のことですら、手駒(てごま)の一つとしてしか見ていない。あの男がセラフィニエに与えたのは、愛情ではなく、宝玉姫になるための(きび)しい教育と鍛練(たんれん)の日々だけだ!」

 シャーリィは、初めて知る事実に愕然(がくぜん)とした。
 シャーリィの知るセラフィニエは、いつでも(おだ)やかな笑みをたたえていて、自分のことはあまり口にせず、シャーリィのことばかり気遣(きづか)っていた。
 だから、彼女に不幸の影を見出(みいだ)したことなど一度も無かったのだ。
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