愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
「おまけに、お前はセラフィニエから、乙女としての幸せすら奪った。セラフィニエが社交界で初めてお披露目されるそのパーティーに、お前は祝福と称して現れたな?王女らしく、華やかに着飾って」
「だって、それは……セラ姉さまから招待状を頂いたから……」
「ああ。まさかセラフィニエが招待状を出していたとは、俺もシュタイナー公も思っていなかったよ。だが、お前に真っ当な良識が備わっていたなら、出席すべきではなかった。光の宝玉姫であるお前が現れれば、主役のセラフィニエが霞んでしまうことくらい、少し考えれば分かるだろう?」
言われて初めてそのことに思い至り、シャーリィは青ざめる。
「あのパーティーまでは、セラフィニエに密かに想いを寄せている男も、結構いたんだ。なのに……あの日以来、シュタイナー家でパーティーを開いても、若い貴公子達が口にするのは、お前の話題ばかり。あんな、ほんの一夜で光の宝玉に惑わされて……セラフィニエの方が、お前などよりずっと美しいのに……」
その苦い声音に、シャーリィは気づく。
「アーベント……あなた、セラ姉さまのことが……」
アーベントははっと顔色を変えた。だが、すぐに元の表情に戻り、冷たく言い放つ。
「そうだ。全ては、セラフィニエのために。お前には悪いが死んでもらう」