愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
宝玉の光が増す。光が膨れ上がり、何かの形を描き始める。
(もっと強い力を……!)
シャーリィが我武者羅に宝玉の力を放とうとしたその時、声が聞こえた。あまりにも聞き覚えのある声が。
「やめろ!シャーリィ!」
「お兄様っ!? 」
シャーリィとアーベントは、同時に声のする方を振り返った。
「シャーリィ……!それ以上、力を使うな!それは……お前の身を滅ぼす……!」
息も絶え絶えになりながら、ウィレスは必死に走って来る。アーベントは訝しげに眉を寄せた。
「何故、こんなにも早くここが分かった?親衛隊どもはきっちり撒いてきたはずなのに」
シャーリィははっと光の宝玉に視線を落とす。
「……私が、宝玉を使ったから?」
光の宝玉姫の血を引く者には、程度の差はあれど、魅了の力が効かない。そして稀に、宝玉の力を感知できる者も生まれる。
宝玉姫の血筋の男は、宝玉姫になる資格こそ持たないが、宝玉姫の資質を持たないわけではないのだ。
「アーベント・クライト!やはり、お前の目的はシャーリィの謀殺か!その罪、たとえ未遂でも極刑に値するぞ!」
ようやくシャーリィの元にたどり着き、庇うようにその前に出ると、ウィレスは腰の剣に手をかける。
アーベントは冷静な目でそれを見遣った。