愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

 シャーリィは躊躇(ためら)った。
 一度はアーベント相手に引き出そうとした力。しかし、この人数が相手となれば確実に、ただでは()まない。

「シャーリィ!私なら大丈夫だ!宝玉の力は使うな!」
 言いながら、ウィレスは向かって来た男の剣を一撃(いちげき)()ね飛ばす。シャーリィは目を見張った。

「……流石(さすが)に、一流の剣術指南を受けているだけあって、それなりに強い。だが、基本に忠実過ぎる読みやすい剣筋だな」
 アーベントの(つぶや)きがシャーリィの耳に入ってきた。
 ウィレスは次々に男達を(たお)していくが、一人倒すたびに、その身体に傷が増えていく。

 シャーリィはどうすることもできず、ただ蒼白になって身を震わせていた。
 何とか最後の一人を倒し終え、ウィレスはがくりと地に(ひざ)をついた。シャーリィはその名を呼び、泣きながら駆け寄る。

「ひどい怪我(けが)……。大丈夫なの?お兄様」
「ああ。お前が無事で、良かった」
 言いながら、ウィレスは剣を支えによろよろと立ち上がる。その目をアーベントへ向け、(にら)みつける。
 アーベントは余裕の笑みを浮かべたまま、剣を(かま)え、二人に歩み寄って来る。
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