愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
回想を破るように、ふいに間近から鋭い剣戟の音が響いた。
アーベントの振り下ろした刃を、ウィレスが剣で受け止めた音だった。
相手の剣を弾き返した後の一瞬で、ウィレスはシャーリィを後ろへ突き飛ばす。地に転がったシャーリィは、必死に声を上げた。
「やめて!」
だが一度始まってしまった戦闘を、そんな叫びで止められるはずもない。
既に手傷を負い、呼吸も荒いウィレスの不利は、一見しただけでも明らかだった。
「光の宝玉よ!アーベントを止めて!」
叫んで宝玉の力を放つものの、やはりアーベントには何の効果も現れない。
「やめろシャーリィ!お前が消耗するだけだ!」
剣戟の合間から、ウィレスが叫ぶ。その間にもアーベントの剣先に斬りつけられ、前髪の一部が宙に舞い散る。
シャーリィはとっさに光の宝玉を額に押し当て、目を閉じていた。
精神を、今までになく深く、深く集中する。今までに使ったことのない力を引き出すために。光の宝玉に全神経を集中させる。
光の宝玉は、今までにない光を放ち始めた。気づき、ウィレスの顔から血の気が引く。
「まさか……やめろ!シャーリィ!そんなことをしたら、お前が……!」