愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
28 光の宝玉は奪う

 気づけば、シャーリィは(やみ)の中に(ただよ)っていた。
(ここは……!? 私、まさか、本当に死んでしまったの!? )

 シャーリィは青ざめて、辺りを見渡す。
 シャーリィの両手の中には、(いま)だ光の宝玉が(にぎ)られていた。
 だが、今までと違うのは、その宝玉から一筋(ひとすじ)の白金の光が(はな)たれているということだ。
 
 まるで光のリボンのように見えるそれは、真っ()ぐ前方へと()びている。そして、その光の先にいるのは……。
「……アーベント?」
 名を(つぶや)いた途端(とたん)、ふいに周囲の景色が変わった。

 
 そこは、よく手入れされた立派な庭園。白い花をいっぱいにつけた(ビルネ)の木の下に、一人の少女が立っている。
 その髪は、少女の頭上で風に揺れる花と、同じ色。瞳は、どこまでも深く澄んだ(あお)

 まだ幼いその少女は、夢のように美しかった。
 まるで、そこに咲く白い花が人の姿をとって現れたのかと疑うほどに。
『……あなた、だぁれ?どうして泣いているの?』
 幼い少女の声に答えるのは、涙に震える幼い少年の声。
『きみは、だれ?花の精?』
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