愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
29 竜神の力の代償
『ああ……。やっと見つけたわ』
息を切らして駆け寄って来るセラフィニエ。
そのドレスに、シャーリィは見覚えがあった。それは、あの仮面舞踏会の夜の……。
『セラフィニエ!? 何故こんな所に!? 』
『あなたに会いに来てはいけなかったかしら?昼間はあまり話ができなかったから』
そう言って笑顔を向けるセラフィニエに、シャーリィはふと、違和感を覚えた。
シャーリィと会っている時とはどこか違う、セラフィニエの瞳の色。
『そうですか。分かりました。残念ですが、あなたが選んだ道ですものね。あなたはもう私の兄ではなく、シャーリィ姫の騎士なのですね』
その寂しげな微笑みに、シャーリィの記憶の中のセラフィニエの顔が重なる。
――私の望むそのただ一人の人は、決して私を想ってはくれないのよ。だから、いいの。
そう言って、回廊の方へ視線を飛ばしたセラフィニエ。
今、思い出して気づく。その視線の先に、その時いたのは……。
(……まさか、セラ姉さまの好きな相手って……)