愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
セラフィニエに累が及ばないことを知り、シャーリィはほっと安堵の息をつく。が、すぐに顔を曇らせた。
「アーベントは……」
「そのことだが、アーベントにはいずれ、ミレイニへ行ってもらおうかと思っている。レグルスがまたこの国を訪れた時、その帰路の護衛と、ミレア王女に親書を届けるための使者の一員として」
「え……?でも、アーベントは……」
怪訝そうに首をひねるシャーリィを遮り、ウィレスは言葉を続ける。
「……という名目で、ミレア王女に謁見させ、そのお力を借りようと思う。あの方の守護する宝玉なら、アーベントの心を縛る光の宝玉の力を、無効化できるだろうからな」
「あ……」
シャーリィは目を見張った。
アーベントに対し、シャーリィが罪悪感を抱いていることを、ウィレスはきちんと理解してくれていた。
それだけでなく、解決策まで講じてくれていたのだ。
「だが、アーベントの心を光の宝玉の呪縛から解放するということは、お前への恨みをも蘇らせるということだ。無論、その時には、改めて牢に入ってもらうことになるが……将来的なリスクを思えば、このままにしておいた方が良いかも知れんぞ」