愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

「そう……だったの……」
 とうの昔に気づいていたことだが、改めて事実を()きつけられると、ショックを受けずにはいられない。
 ましてシャーリィは、光の宝玉で他人の心を縛ることの非道(ひど)さを知ったばかりだ。
 
「ミルトの心も、解放してあげたいけれど……難しいでしょうね……。きっと、お母様が許してくださらない」
 言った直後、シャーリィは思い出す。母と呼んだその人が、自分の実の母親ではないことを……。
 
「私……あの方のことを、ずっと尊敬していたわ。お身体(からだ)が弱くていらっしゃるのに、あんなにも国のことを想って、立派な王妃だと……。でも、あの方が私とルーディを入れ替えたりなさらなければ、こんなことにはならなかったのよね……?どうしてなの?どうしてそんな……(おろ)かなことを……」
 
 シャーリィの口から、思わず(うら)みごとが(こぼ)れる。ウィレスは静かに首を振った。
「誰もが救われる策など、全知でも全能でも無い人の身で、考えつけるものではない。追い()められれば(なお)のことだ。その時の母上にとっては、それが最善の策に思えたのだろう。秘密を(たも)つ限り、自分達さえ涙を飲んで我が子を手放せば、皆が幸せになれると……」
「お兄様……」
 
「他に、もっと良い手段はあったのかもしれない。だが、母上にはそれが見出(みいだ)せなかった。そして、この方法を選んでしまった。選んでしまった以上は、秘密を保ち続けるより他に道は無い。母上に失望し、()めるのは簡単だ。だが、お前がもし、母上と同じ立場に立たされたとして、絶対に同じ道を辿(たど)らずにいられると、断言(だんげん)できるのか?」
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