愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
32 愛され聖女は片恋を愛しむ(終)
「……そんなことのために、今まで、ずっと……?リヒトシュライフェの王子にふさわしくないと、陰で嘲る人もいたのに……」
「私の評判など、些細なことだ。兄が妹に懸想していると思われるよりは、よほど良い。それに、私ひとりの醜聞で済むなら、まだ良いが……下手をすれば、お前の出生に勘づく者も出るかも知れんからな」
シャーリィは言葉を失った。
ずっと、ウィレスの奇妙なこだわりだとばかり思っていた。ただ、派手に着飾るのが苦手なだけなのだと……。
そこにそんな真実が隠されていたことなど、思いもしなかった。
「……お兄様のすることは、いつもいつも、私のためなのね……」
「……私が勝手にしているだけだ。お前が重荷に感じることはない」
(また、そうやって……私のことばかり考えて……。自分のことは、いつも後回しなのね……)
シャーリィは、泣きたい気持ちでウィレスを見つめる。
「そんなに、私のことを想ってくれているのに……私と結ばれるつもりは、ないのね?」
その問いは、ウィレスにとっても、シャーリィ自身にとっても、痛みを伴うものだった。
ウィレスは感情を見せないように、ごく短く答える。
「ああ」