愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
10 襲撃者
「あの、ミルト様。ミルト様は、王妃様と、シュピーゲル家のマリア・リーリエ姫のご出産に、立ち会われたわけですよね?」
「はい。初めてお会いした王妃様は、それはもうお美しくて……」
今一つ会話の噛み合わないミルトに、アーベントは引きつった笑顔で更に問う。
「あの、王妃様のお話ではなくて……姫様と従弟のルードルフ様は、ほんの数時間の差で、同じ日にお生まれになったというのは、本当なのですか?いくら双子とは言え、同じ日にご出産なんて、珍しいこともあるものですね」
「ええ。とても仲のよろしいご姉妹で。妹君の陣痛が始まられたのに触発されたように、王妃様も予定日より早く破水してしまわれて……大変だったのでございますよ。予定日より一月近く早いご出産だったものですから、準備も整わず、立ち会ったのも私一人で……」
「お一人で立ち会われたのでは、ご苦労なさったでしょう。しかも生まれてくる子は、次代の光の宝玉姫であると、先に予言で知らされていたわけですから。万一のことがあったら、あなたの首が飛んでしまう」
「予言……」
「ほら、姫様のお生まれになる幾月か前に、時空の宝玉守りの姫君が、王妃様に手紙でお知らせ下さったでしょう?王妃様が、次代の光の宝玉姫をお産みになることを、予知夢に見たと。そのことが国民に発表されるなり、国を挙げてのお祭騒ぎになったと聞いていますよ」
ミルトはしばらく、ぼーっと焦点の定まらない瞳で猫の背を撫でていたが、やがて口を開いた。
「王妃様は、それはそれはお美しい方でした。私に対してもお優しく、ご出産の苦しみにも、気丈に耐えていらっしゃって……」
「いや、ですから王妃様のお話ではなく……」
アーベントが困り果てたように頭を掻いたその時、扉が開き、驚いたような少女の声が響いた。
「まぁ、アーベント。ここにいたの」
「姫様?どうして、このような時間に、ここにいらっしゃるのですか」