愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
14 運命と戦う覚悟を

「お久しぶりでございます、マリア・シャルリーネ王女殿下。変わらぬ元気なお姿を拝見し、(うれ)しゅう存じます」
 セラフィニエは、両手でスカートの(すそ)を広げ、優雅に礼をする。シャーリィは頬をふくらませた。

「もうっ、セラ姉さまったら。そういうのは無しにしましょうと言ったでしょう?」
「そうだったわね、シャーリィ姫。こんな時間にごめんなさい。お邪魔だったかしら?」
「とんでもない!セラ姉さまだったら、いつでも大歓迎よ。ぜひ、一緒にお茶をしていって頂戴(ちょうだい)

「もちろんご一緒させて(いただ)くわ。そう思って、お茶に良く合うお菓子を、お土産(みやげ)に持参したの」
 にっこり微笑み、セラフィニエは、シャーリィの(かたわ)らに立つアーベントへと視線を向けた。アーベントは先ほどから、(こお)りついてしまったかのように動かない。

「半年ぶりね、アーベント。元気そうで良かったわ」
「え?セラ姉さまとアーベントは、知り合いだったの……」
 驚いたように言いかけ、シャーリィははっと気づく。

(そうだったわ。アーベントのお母様は、シュタイナー公の姉君なのだもの。二人は従兄妹(いとこ)ということになるじゃない)
 アーベントの()い立ちとセラフィニエの身分を知りながら、今の今まで二人の血縁関係に思い(いた)らなかった己のうかつさを、シャーリィは恥じた。

(じゃあ、前にアーベントが言っていた、一緒に暮らしていた従妹(いとこ)って……)
 従妹の話を最初に聞いた時、一瞬頭に引っかかったのはセラフィニエのことだったのだと、シャーリィは今更(いまさら)ながらに気がついた。
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