クリプト彼氏 ─バットはリップルが大好きだから─


 まだ歩けるとはいえ、かなり酔いが回っているリップルを何とか部屋まで連れて来れた。
テザーから引き渡された彼を、マイニング所から介添えして送り届けるのは、これで2回目。
前回は初めて見るリップルの状態に驚いたものだが、少し慣れてきた。

「バットぉ。うちに来るの。久しぶりじゃな」
「部屋。散らかっとるけん。あんまり見んなや。あー。でもこれ。これ見ぃ。新作のスニーカー。ええじゃろ?」
「バットぉどう?ちいとはブラウザに慣れたぁ?困ったら。俺に何でも言えや?…」
まさに今、あこがれの彼氏のふにゃふにゃした姿に困っている訳だが、言ってもどうにもならない。
「リップル、もうちょっとお酒の量減らそうよ~~~???」
「たまにしか飲まんけん。かえってお酒に弱いまんま。なんじゃと。テザーが言っっとったぁ」
そんなもんなのか、大人の世界はわからない。しかし部屋に送り届けるという使命は果たした。もう帰ってライオンのぬいぐるみ抱いて寝たい。
じゃあ次のレッスンまでバイバ~~~イ???と伝えたところで引き止められた。

「バット。オレ。格好ええ?」
そもそも絶対的に格好いいし普段から格好いい。そんなリップルはほろ酔い状態でも
「当たり前だよ!かっこい~よ!」
「どこがぁ?」
大人ならここで「何か自信がなくなるような事があったんだな」と察するのだが、バットにはまだそんな余裕はなかった。全力で質問に答えるだけだ。
「全部だよ!」
「じゃ。全部褒めてぇ」
バットはこの瞬間、酔っ払いへ真摯に対応するのはすごく面倒くさいことを学んだ。

「えーと、夢に向かって真っすぐに頑張る所」
ニコニコしながらリップルが相槌を打つ。
「かなり昔に目標を決めたのに、全然ぶれない所」
キラキラした目でリップルが見つめてくる。
「ちゃんとバットに似合うプレゼントをセレクトしてくれる所と、そもそもセンスがいい所」
リップルがベッドへダイブした。うめいている。

「顔はぁ?」
え?顔?そんなものははなから織り込み済みの、基本条件の一つだと思っていたが
「もちろんいつも笑顔なとことか、ちゃんと目を見てお話してくれるとことか」
そーじゃなくてとリップルの顔に書いている。造形をほめてほしいらしかった。
「体とかも。どう?」
キレのあるダンスと飲み込みの早さ、体重管理などを話題にするも
「あー。そういうとこが。格好ええんか。ありがとう。もっとな。セクシーなとことかな。思わない系のキャラじゃな。お互いそういうキャラづくりしとったよな。じゃぁしょうがないわなぁ」

セクシーさについて話すのは、バットにとってはちょっとした禁忌だった。普段から気を付けてないと、コントラクトなどのトークンで素が出てしまうから。普段からアイドルとしてふるまいがちで、遠ざけていたのだ。Braveにも指導されている。でもそれはリップルも同じだった。一緒に仕事をしている間は聖人君子のリップルしか見ていない。

「そうじゃな。バットは。手がセクシーじゃわ」
リップルはベッドから手を伸ばし、バットを手繰り寄せた。手を重ねる。
「ずいぶん背丈も伸びたし。オレと同じ大きさの手。バットはぼっけえなあ。ちゃんと成長しとる」
恋人つなぎをされた。
「なんか幸せじゃから。このまま寝ちゃおうかなぁ」
「しわにならないように、服はちゃんと脱ごうよ~寝間着どこ?」
恋人つなぎがほどけない。リップルの顔が近づいて唇が触れる。眼前の潤んだ視線に捕らえられた。バットは、片手でピンクに染まる頬に触れると、もう一回。両手が自由になったかと思えば三回目。リップルは舌で唇をなめながらバットの腰に自身の膨らみを当ててくる。バットが舌に応じて深く長く口づけ、口の端からリップルの艶めいた声が漏れた。刹那、大きく震えてゆっくりと呼吸を整えた。
「ヤバい。出ちゃっとる」
リップルがゆっくりと下着を脱ぐときに白濁が糸を引くのが見えた。果ててしまったらしい。

「バットはどう?」
アイドルが!!!リップルに短パンをずり下げられながら、今の状況にバットは衝撃を受けた。
「ちょっと~!リップルのえっち…」
リップルはバットに優しく触れながら上着をユルユルと脱ぎ始めた。バットが手を貸すと腕でリップルを包む形になる。袖から腕が抜けたところで、今度は二人でベッドに腰かける。今度はバットがリップルの口内を味わう。少しお酒の香りがする。滑らかな肌を探られて、胸の突起をかすめた時に小さな声が出た。
「バットはすごいな。すごい…気持ちいい」
リップルはバットに跨ると、大きく成長したものをバットの身の内へ促した。少しずつ中を侵してゆくたびに普段と違うリップルのかすれた声。先ほど果てたはずの部分が道半ばでリップルが行き来し始めると、勢いよく奥へ腰を押し付けた。体が跳ね、快楽に貫かれる。リップルはバットの制止も聞かずに腰使いが荒くなり、高みへ上昇し続ける。少し恥じらいながらリップルが目を伏せた時、絶頂へ達してしまった。長いまつ毛に涙の粒が弱く光り、幸福感と目の前の荒い息づかいのリップルをフワフワした気持ちで見つめた。
「バットは、こーゆーの初めて…リップル、大好きだよ」
回らない頭で必死に言葉を紡ぐ。バットにとって初体験だった。こんな形で体を繋ぐのは少し抵抗があったが、それでも嬉しかった。軽いキスの後にゆっくり引き出すとリップルが身を震わせる。初めて見る姿と、初めて触れる場所。

言葉にすると関係が壊れてしまうような気がして、リップルははっきりと言えなかったが、甘くほどけた双眸がバットにとっての答えだった。
「バットは…リップルが大好きだからね。」
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