ずれと歪み
第二章 豚に饅頭

暑中お見舞い④

最近僕はある事を思う。

それは小説のタイトルと章が少しずつ本文と関係のないものになってきていることだ。

本文を作ってタイトルや章を考えてもいいのだが僕にとっては小説を書くことが目的ではないので、気にしないことにした。

彼女は僕を家まで送ると後部座席から紙袋を取り僕に手渡した。

「暑中お見舞いよ」

僕はバッグの中に入れたままにしていた、以前購入したキーホルダーがあったので適当に理由をつけて彼女に渡した。

「僕は普段からお返しを持ち歩いているんです」

そう言うと彼女は笑った。

「あなたの大切な人のために渡した方がいいんじないの?」

「プレゼントをもらった時はお返しをするのが僕の考えです」

そう言うと彼女はありがとうと言い受け取った。

ちなみにそのキーホルダーはリンゴのキーホルダーだ。

家族と青森県へ旅行に行った際、シンプルなデザインと安い価格だったので購入したが購入したことでさえ忘れていた。

僕は家に帰り部屋に戻って紙袋を開けた。

アルミ製の筆箱とお菓子のクッキーが入っていた。

デザインはアメリカ映画を連想させた。

夏休みが終わり授業が始まると僕はその筆箱を使った。

居眠りをしてうっかり地面に落とすと、周りも振り向くくらいの音がした。

蓋が開き筆記用具も散乱した。

とは言ってもペンが二本、消しゴムが一つ、修正テープが一つしか入っていなかった。

筆記用具すら取り出さない日もあったが、おかげで1日一回は蓋だけでも開けたことになった。

音楽の授業では彼女が普段持ち歩くペンケースにリンゴのキーホルダーがついていた。

当時僕には「すみれ」という彼女がいた。

一年生の時に音楽の話や漫画の話で仲良くなり付き合い始めた。

お互いにお互いの知らないことを話していく中で、それぞれの好みに共感できるものが多かったのだ。
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