ずれと歪み

すみれ⑤

すみれは女の子の友達も多かった。

勉強もそこそこできたし、部活ではテニスをしていた。

夏になると伸ばしていた髪を切りショートヘアにした。

夏休みは二人で映画館や買い物、食事を楽しんだ。

電車に乗って海や祭りにも行った。

時折彼女の家で音楽を聴いたり漫画を読んだりした。

時折彼女のお母さんがいると挨拶をした。

同性の友人であればあまり気をつかわなくてもいいのだろうが年頃の女の子に部屋に異性がいるというのは親としても少なからず心配をするかと思ったからだ。

帰る時も挨拶をした。

僕は彼女の両親に気に入ってもらおうと思ってやっていたのではなく、彼女との関係を少しでも長く続けたいとの思いだった。

夕方前には彼女を家を出たし、外に遊びに行った時も夕食前には彼女を家まで送った。

そこまで気をつかうとかえって変わった人だと思われていたかもしれない。

すみれは夜まで帰れば大丈夫だからと何度か僕に言ったが僕はそれを受け入れなかった。

その度に彼女はうんざりした表情を浮かべていた。

彼女とはその年の11月に別れた。

「私はあなたのことが本当に好きなのかわからなくなったの。友達以上の関係には向いていなかったのかもしれない。」

僕は話し合う気すらもなかったので、友達の関係に戻ろうと言い別れた。

その後も僕たちは何事もなかったかのように教室内では会話をした。

そう思えば恋人同士と呼び合えるようなことは、ほとんど何もしてこなったのかもしれない。

いや、どこにでもいる高校生とそんなに大きな違いはないはずだ。

ある日彼女は僕の机までくると、その筆箱どうしたの?と聞いた。

友達にもらったと答えるとその筆箱が売っている雑貨屋のことを教えてくれた。

渋谷にあるそうだ。

他にもいろいろな生活用具も売っていると彼女は言っていた。
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