わがままな純愛 ケイレブとユリア
フェンネル領とは
「あばよ、ケイレブ」
貨物船の船員たちの声に、
ケイレブは少し手を振った。
船はすべるように、
ケイレブを残して去っていく。
それをしばらく見送り、
リュックから携帯用ウィスキーの
水筒を取り出して、一口飲んだ。
ケイレブは石垣に座って、
ゆっくりと景色を見回した。
久しぶりの陸地だ。
足元が、ふらふらしないのがいい。
ここは港湾都市の沿岸ではあるが、港の規模は小さい。
正面は海、背後は山並み。
こぎれいで、上流階級の避暑地といった風で、
高級そうな邸宅が、山沿いに並んでいる。
「目新しいものは・・ないか」
ケイレブは、薄汚れたリュックを
かつぎなおすと、
都市部へ移動しようと、道路沿いを歩き始めた
道路の片側は、常緑樹のみっちりとした植え込みが続いており、
見えないが、子どもたちの歓声が聞こえる。
小学校のようだ。
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