わがままな純愛 ケイレブとユリア
「失礼します。」

ケイレブが扉を開けた。
目に入ったのは、正面の大きな執務机だが、
そこには誰も、いなかった。

「どうぞ」と、
声が聞こえたはずなのだが・・

あれれ・・?
ケイレブは、部屋を見回した。

それは思ったより、ずっと小さな部屋で、
壁紙が、淡いグリーンで統一されている。

天井までの本棚と、壁際の小机には百合の花が、芳香を放っている。

壁には、小さな椅子が2脚、
子ども用なのだろう。
置いてあるのが、ほほえましい。

机の後ろが、テラスになっているようで、美しいレースのカーテンが、風で翻った。

「ああ、こんにちは・・」

ひょっこりと天使が、
いや、マギーが聖女様と言ったが、校長先生が、机の角から
顔を覗かした。

「報告書が、散らばってしまって・・」

校長先生は、昨日のように、
スーツ姿の男装で、
じゅうたんの床に座り込んで、
書類を集めていた。

ケイレブも一緒に、散らばっている書類を拾った。
< 19 / 66 >

この作品をシェア

pagetop