わがままな純愛 ケイレブとユリア
「ケイレブさんにはもっと、
私の置かれた状況をお話して
おくべきでした」
そう言ってから、
天使は、ワインを一口飲んだ。

「御存じの通り、私はここの領主の娘です。
父は今、ほとんど寝たきりの状態ですが・・・」

エメラルドの瞳が、臥せられた。

「姉たちは、他国の王族に嫁ぎました。
領主の娘には、結婚の自由はありません。
父の判断で、結婚を決めますから」

ケイレブはうなずいた。
そう言った話は、珍しいものではない。
領主や王族の娘は、政略結婚という名の、人身売買か、人質と同じなのだ。

「フェンネル家には、嫡男がいませんでしたから。
父亡き後、跡目相続の恰好の
争いの種火になります。

もし、私も結婚したら、
それぞれが嫁いだ、3家の争い事になるでしょう。」

ケイレブは確認するように
「だから結婚はしない。
男の恰好をする・・のですか」

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