先輩からの卒業 -after story-
巧くんも同じことを思ったようで、
「朝まで起きねぇな」と口にした。
「「じゃあ、もう少しだけ……」」
今度は私と巧くんの声が重なる。
その続きは言わなくても、わかるでしょ?
だって、ほら。
巧くんの瞳に映る私は、巧くんと同じ顔をしてるから。
3度目のキスは、さっきよりも少しだけ長く。
離れるとまた角度を変えて唇が重なった。
何の音もしない、静まり返った部屋の中。
甘いリップ音だけが頭の中に響いた。
「ここで寝ようかな」
何度目かのキスを終えたあと、隣で寝転んでいた巧くんがそう口にする。
「だ、だめですよ。お兄ちゃんにバレたら何言われるか」
「冗談。俺もさすがに耐える自信ないし」
た、耐える自身?
それは一体、何に……?
「あっ。奈子、今やらしいこと想像しただろ」
「し、してません!!」
「ほんとかな?」
「ほ、ほんとです!」
巧くんと付き合い始めて約1ヶ月。
まだまだ知らないことばかりで時々不安にもなるけど、2人でいればきっと、それ以上の幸せが待ってるはず。
(深夜、ふたりの秘事)
fin.