先輩からの卒業 -after story-
引っ越して来たばかりで部屋は綺麗。
片付ける必要はなし。
「とりあえずスーパーに買い出し行って、掃除機かけとくか」
今日の約束をした日、
「巧くん引っ越しで疲れてるでしょ?お家デートにしようよ」
と奈子から提案があった。
正直、お家デートにはあまり乗り気じゃなかったが、奈子の気遣いを無下にすることもできなくて、結局うちで会うことになった。
こんな狭い空間で付き合ってる男女が2人きり……。
はぁ、俺は耐えられるのだろうか。
この前のキスだって、色々ヤバかったのに。
「こんなこと考えてるとか、知られたくねぇな」
気持ちを告げる前は、こんなこと考えもしなかった。
ただ奈子と以前のように話したくて、無邪気な笑顔をもう一度見たかった。
願いはそれだけだったのに、付き合い始めてからはどんどん欲張りになっていく。
「って、マジでこんなこと考えてる場合じゃなかった」
奈子から連絡がきてからもう20分は経っている。