先輩からの卒業 -after story-
あの日のことは今でも鮮明に❨side巧❩
高校を卒業してから約1ヶ月。
あっという間に時は流れ、今日は大学の入学式だ。
いよいよ、本格的な新生活がスタートする。
入学式はもう何度も経験しているというのに、新しい制服に腕を通した時よりも、今日の方が明らかに緊張している。
地元を離れ、知らない奴らと顔を合わせるんだから当たり前か。
人見知りするタイプじゃないんだし、気楽に行こう。
「やべっ、時間だ」
腕時計を見ると予定していた出発時刻を3分程オーバー。
「忘れ物は……ないよな」
持ち物は昨日、散々チェックした。
「じゃあ、クマ嬢行ってきます」
ベッドの横にちょこんと座ったクマ嬢の頭を撫で、俺は家を出た。
そして、足早に駅へと向かうと、同じような格好をした大勢の人が電車の到着を待っている。
見た目だけじゃ同じ大学の人間か判別つかないな。
通勤ラッシュの時間帯ではないが、この中には会社に向かう人もいるだろう。