先輩からの卒業 -after story-
「あの……次、移動っすよ」
昔のことを思い出していると、隣から聞こえた低い声。
顔を上げると、入学式のとき隣に座っていた男子が荷物をまとめて立っていた。
他の生徒も次々と出口へと向かって歩いている。
そんな中、ただ1人座ったまま説明時にもらった資料を広げている俺。
……やべー、何も聞いてなかった。
「ありが……って痛ッ…!」
慌てて立つと、その場で膝を強打する始末。
初日から何やってるんだか。
改めてお礼を伝えようとするも、もうその男子は近くにいなかった。
わざわざ、それだけ伝えに来てくれたのか?
親切な奴だな。
次、会ったらお礼言わなきゃな。
なんて思っていると、その機会はすぐに訪れた。
学部からさらに20人程度のクラスに分けられた教室で、1人スマホに目をやる男子。
さっきの……!
同じ学部で同じクラスなのか。
俺はその男子の隣の席に腰掛け、改めて声をかけた。
「さっきはありがとう。同じクラスだったんだな」
「あっ、どーも」
「入学式の時も隣の席にいたよな?あ、俺、三宅巧」
「ああ、そういえば……いた……ような?俺は駒田閑也」
「閑也か。よろしく」
「こちらこそよろしく」