先輩からの卒業 -after story-
閑也の反応が気になり、視線をスマホから隣に移すと目に入ったのは不思議そうな表情。
これは一体、どういう感情なんだ?
そう思っていると、閑也がポツリとつぶやいた。
「会いに行けばいいじゃん」
「え?」
「え、だって電車乗れば会えるんでしょ?」
閑也の言葉に思わず、目を見開く。
……その発想はなかった。
奈子にはいつでも会いに来ていいって言ったくせに。
そうだよな、会いたいときには素直に会いに行けばいいんだよな。
「あ、巧。電車きた」
大きな音と共にホームへと電車が到着する。
俺は隣で立ち上がる閑也の背中をポンッと叩き、「ありがとう。俺、あっちの電車乗るわ。彼女に会いに行く」とホーム向かい側の電車を指差した。
「ん、また明日」
そう言った閑也に手を振り、駆け足で階段を降りる。
そして、到着した電車に乗り込んだ。
……あ、まだ昼過ぎなんだし一旦着替えてから行っても良かったのか。
奈子に会いたい。その一心だけで電車に飛び乗った俺は当然、スーツのまま。
奈子、突然会いに行ったら驚くかな。
あっ、てか連絡。
ポケットからスマホを取り出し、奈子に
『今、家いる?
時間があったら会いたいんだけど』
そうメッセージを送った。
だが、朝と同じ。
既読マークはつかず、返事もこない。