先輩からの卒業 -after story-
「あれ、というか巧くん急にどうしたの?大学で何かあった……?」
俺が突然会いに来たことに対して、すっかり心配モードの奈子。
相変わらず心配性だな。
ただ、会いに来た。という発想は奈子にはなさそうだ。
「いや、ただ奈子に会いたくなって」
そう告げると、目の前から「ふふっ」と笑い声が聞こえてくる。
「ん?」
俺、何か笑われるようなこと言ったっけ?
「……ごめん。なんか初めて巧くんと会った日のことを思い出しちゃった」
「覚えてる?」と奈子は首を傾げる。
忘れるわけがない。
それに、俺も今日ちょうど思い出したところだ。
「……覚えてるよ。やべー奴だと思ったろ?」
「ううん、思ってないよ。からかうような素振りでもなかったし、素直に嬉しかったから」
「引かなかった?」
「うん。お兄ちゃんから巧くんの話はよく聞いてたし、あの言葉で巧くんのことが気になったんだもん」
……あの日の俺。
お前はどうやら“大失敗”していなかったらしい。
まさか、あの台詞がきっかけだったとは。
それから、ありがとう悟。
「あ、玄関で長々とごめんね?あがって」
「お邪魔します」
静まり返ったリビング。
どうやら奈子以外の家族は留守のようだ。
「そういや悟は?同じ大学だろ?」
そう、実は奈子が進学した大学には悟がいる。