先輩からの卒業 -after story-
「あ、ありがとうございます」
手持ち無沙汰になった私はキッチンの電気を消そうとスイッチに手を伸ばす。
すると、巧くんは「で?」と表情ひとつ変えず口にした。
「え?」
その言葉に思わず首を傾げる。
“で?”とは……?
「は、運んでもらってすみません……?」
「いや、そーじゃなくて。だから14日デートしない?って誘ってるんだけど。てか、何回デートって言わせるんだよ」
そう言うと巧くんは長いまつげを伏せながらフッと笑った。
あ、そう言えば炒飯に気を取られていて返事がまだだった。
少し前の私だったら、巧くんと2人で出かけるなんて100%断っていた。
他の誘いだったとしても『別にいいですけど?』なんて素っ気なく返していたに違いない。
でも、今は違う。
お互いの気持ち知り私は巧くんの彼女になったんだ。
もう少し素直にならないと……。
「し、したいです。デ……デート」
デートなんて言葉を自ら口にしたことなんて今までほとんどなく、(あったとしても自分以外の誰かの話)顔がみるみるうちに赤くなっていくのがわかる。