はじまりは雨のなか
偶然の再会
思わず目が合う。
時が止まった…みたいだった。
そして、彼は私の空いた方の手を取り声を掛けてきた。
「こんばんは。アイカワさん」
「っ…どうして……名前…」
「あぁ、だって家まで行ったんだから知らないはずないでしょ」
と私を見てクスリと笑った。
改めて見た彼はとても端正な顔立ちをしていた。そして、不敵な笑みを萩原くんに向けながら言う。
「帰るよ」
「えっ?あっ、はい」
その瞬間、私の手を握る力を強くして歩き出した。
たぶん皆驚いているだろう。
今度いろいろ聞かれそう。
ろくに挨拶もしないで帰ってきちゃった。
いろいろ考えることはあっても、酔っていて頭がうまく働かない。でも、握られている手を握り返し、前を歩くこの人について歩く。
しばらく歩くと彼が振り返った。
「また困っていそうだったから、勝手につれてきちゃっだけど、大丈夫だったかな。ごめん」
ごめん…なんて頭を下げてくれるけど、本当に困っていたのだから、謝られることではない。
それにずっと会いたかった人だ。
だけど、私はさっき女の人といたのを見ていた。
だから、つい可愛くない言い方で聞いてしまった。
「あのさっき一緒にいた女の人を置いてきてよかったんですか?」
「女の人?」
「私見たんです。さっきのお店にあなたは女の人といましたよね?」
「あぁ…。あれは妹だよ。あの後あいつの彼氏がきて俺はもう帰っていいんだと言われたよ」
「妹さん?」
「そう。だから気にしないで。行こう」
「あの私…あの時のお礼もきちんとしていなくて、本当にありがとうございました」
握られていた手を放して、お礼を言う。
「あの時のお礼はもらったよ。ちゃんと読んだ」
「メール、見ていただけたんですか?」
「あぁ」
向き合って素敵な笑顔を見せてくれる。