しらすの彼
 特売の鶏肉を私も買って、レジに向かう。人も多いからレジも混んでいたけど、ひとつだけ短いレジがあった。
 不思議に思いながらそこに並ぶと、レジのところに若葉マークがかかっていた。

 ああ、研修中の方なのね。急いでいる人は、ベテランさんのとこに並んでいるのか。
 私は急いでもいないので、のんびりとそこで順番を待つ。
 新人さんかあ。いつから入ったのかわからないけれど、私と一緒だね。

 私の前の人の順番になった。中年の男性だったけど、長く待たされてイライラしているらしく、乱暴にかごを置く。
「お待たせいたしました」
 レジの人は、若い女性だった。私と同じくらいかな。疲れている様子がわかる。

「さんざん待ったぜ。とっととしろよ」
 中年の男性が乱暴な調子で言った。びくり、とレジの人が肩を揺らす。おびえてしまったのか、何度も打ち間違いをしていた。
「段取り悪いなあ、おい。なめてんのか」

 大きな声ではないから、どうやら他の店の人は気づかないみたい。でも、ねちねちと絶えず続く文句に、レジの人の手が震えているのが見えた。
 ああ、あんなふうに言われたら怖いよね。
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