しらすの彼
 その様子をはらはらしながら見ていると、ついに中年の暴言に耐えられなくなったのか、レジの女性がぽろりと涙をこぼした。

「そ、そんなに言わないでください」
 私は、ついにがまんできずにその中年に言った。

「ああ? なんだって?」
 ぎろりとこっちを睨む。
 う、足がすくむ。でも、もう見ていられない。

「まだ、慣れてないってここに書いてあるじゃないですか。お急ぎかもしれないですけど、せめて終わるまで黙っていてあげてください」
「なんだよ、お前。文句あんのかぁ? ああ?」
 中年がこっちに近づく。ぎゅ、と自分の手を握りしめたときだった。

「お静かに願います。他のお客様にご迷惑です」
 私の前に誰かが立った。その人の背中で、中年の姿が見えなくなる。

「乱暴な言葉は慎んでください」
 あ……
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