夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

「大丈夫ですか?」
「大丈夫です……なんだか気持ちがいいだけ。あの……名前を聞いてもいいですか?」
乙羽(おとは)です」

「乙羽さん……ふふっ、顔と一緒で綺麗な名前」
「……乙羽悠(おとはゆう)。悠と呼んでください」
「悠……」
「そう、悠」

 そう言って真っ直ぐに見つめてきた彼から目が離せなくなり、しばし無言で見つめ合う

 やけに心臓がうるさくて。なんだか落ち着かなくなった私はグラスの中の液体を一気に煽る。

 カッと全身が熱くなった。

「もう一杯ください!」
「いや、ペースが早過ぎでしょう」
「ふふっ、いいんです、気分がと〜ってもいいので!」
「ですが……」
「ふふっ、あのね、じつは私……」

 これはアルコールのせいなのか、目の前の彼の魅力にあてられたのか……

 フワフワ、フワフワ、雲の上を歩いているみたいで、なんだかとても気持ちよくて。

 悠が何か言っているのが聞こえたけれど……
 私の意識はどんどん遠のいて、そのまま心地よい夢の中に吸い込まれていった。
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