夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
――雨が降っている? ……違う、これはシャワーの音だ!
そう思った途端に目が覚めた。
ガバッと身体を起こしたところで額を押さえる。
駄目だ、目がまわる。頭が重くてクラクラする。すぐに枕に頭を戻す。
――ここは……そうか、ホテルの部屋だ。
「……って、どうして!?」
今度はゆっくり起き上がり、サイドテーブルの時計を確認する。
時刻は午前3時。
こんな中途半端な時間に目が覚めたのは、時差ぼけのせいなのか、さっきから聞こえる水音のせいか……
私は恐る恐る部屋の入口近くに視線を向けた。
やはりこの部屋に私以外の誰かがいる。そしてバスルームでシャワーを浴びているのだ。
「怖っ!」
フロントに電話すべきだろうか、それとも911?
しかし状況を把握できていないのに大騒ぎしていいものだろうか。
だって私は何も覚えていないのだ。もしかしたら酔った私が誘ったという可能性も……
そこまで考えて慌てて衣服を確認するも、洋服は昨日のままだしストッキングも履いている。
どうやら私の処女は健在らしい。
――よし、ひとまず逃げよう。