夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

 どういう流れでこうなったのかは知らないが、相手がわからないのは恐怖でしかない。

 私はスーツケースがロックしてあることを確認すると、ひとまずバッグとスマホだけを抱えてドアへと向かう。

 廊下に出れば人目がある。相手が部屋から出てきたところで顔を確認しようと決めた。

 私が足音を忍ばせてバスルームの前を通過しようとしたそのとき。

 ――あっ!

 目の前でいきなりバスルームのドアが開き、白いバスローブ姿の侵入者が目の前に現れた。

「キャーーーッ!」
「うわっ!」

 驚きのあまり尻餅をついた私は、目を瞑ってバッグをブンブン振り回す。

「いやぁ〜っ! 変態! 痴漢! 来ないでぇ〜!」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!」

 バッグを掴まれ手が止まる。

 ――んっ?

 なんだか聞き覚えのある声だ。
 そっと目を開けるとそこにはどアップのハンカチ王子。
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