夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
「えっ?」
「ちょっと、変態ってひどいんじゃないかな?」
「えっ、ハンカ……悠……さん、どうして?」
「ハハッ、ハンカチ王子は勘弁して。悠でいい。体調はどう? 気持ち悪くない?」
悠は私を窓際の椅子に座らせると、冷蔵庫からボトルウォーターを持ってきて手渡してくれた。
自身は私の向かい側に座る。
「まったく覚えていない?」
「あなたが乙羽悠って名前で……私は2杯目? 3杯目のオレンジのビターなやつを飲んで……」
「バレンシアか。それじゃあ、そのあとの会話は記憶にないんだね」
悠が丸テーブルに肩肘をつき、大きなため息をつく。
「……ごめんなさい」
自分が何を言ったのか何をしでかしたのかも知らないが、とりあえず謝るしかない。
そんな私に悠が昨夜の私の失態を教えてくれた。
2杯目のカクテルを飲んだあたりから酔いがまわった私はカウンター席を陣取って身の上話をはじめ、延々と悠に絡み続けたのだという。
『ハンカチ王子は本当に王子様ですね』とか『私の処女をもらってほしい』などとほざいて閉店時間まで居座った挙句、最後はカウンターに突っ伏してうとうとしはじめたのだと聞いて肝が冷えた。