夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
「嘘でしょ!」
「残念ながら嘘じゃないんだよね、茉莉ちゃん」
ちなみに彼は32歳で、年齢を聞き出した私は『私と同じくらいだと思ってたのに!』、『嘘でしょ!』を連発していたらしい。
とにかく彼は、そんな私をこの部屋に運んでくれた。
そしてすぐに帰ろうとしたところに私が泣きながらしがみついたため、そのままベッドで添い寝してくれたらしい。
酔った挙句に自分で処女だと告白していただなんて、あまりにも酷すぎる!
「ごめんなさい……それから、全部忘れてください」
「ハハッ、忘れられないよ。あとさ、あれって本当なの? 52歳のバツ3と結婚するって」
残念ながら本当だ。私がうなずくと悠の顔が険しくなる。
「なんだよそれ、そんな生贄みたいな真似、時代錯誤も甚だしい」
「けれどそれしか方法がないから」
「……ねえ、結婚なんてやめなよ」
そんなの今さらやめられるはずがない。
生贄が姉か私のどちらかだというのなら、私は自分の身を捧げるほうを選ぶ。
「俺がどうにかするって言ったら?」
「ありがとう、でもどうにもならないと思う。それに出会ったばかりの悠がそこまで考える必要ないよ」
「諦めるのはまだ早い。俺がどうにかしてあげたいんだ」
真剣な眼差しと優しい言葉に胸が震える。