夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
2、最高のめぐり逢い side悠
――あっ、可愛い子だな。
それが彼女の第一印象。
羽田発、ニューヨーク行きのエコノミークラス。
周囲の仲間からは『お金があるんだからファーストクラスにすればいいのに』なんてよく言われるけれど、俺はそのときの気分や状況に応じてクラスを変える。
疲れていればファーストクラスにするし、社用で同行者がいればビジネスクラス。
今回は日本酒の買付けに行った帰りで体力的に余裕があったからエコノミークラスにした。
ケチっているわけではない。人間観察が好きなのだ。
今日、俺の隣になったのは小柄な女性。
25、6歳と言ったところだろうか。
大きな瞳に小さくて赤い唇。艶のある真っすぐな黒髪が白い肌に似合っている。
いくら可愛いからといって、むやみやたらに話しかけたりはしない。
迂闊に話しかけて脈ありと見られれば、しつこく話しかけられくっつかれ、逃げ場がないだけにとんでもないことになる。
その逆にナンパだと勘違いされて警戒心を持たれるのも心外だ。
いずれにせよ十数時間の長旅が気まずくなるのは御免なので、今回も必要以上に関わりを持たずにいよう、そう決めていた……はずだった。