夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
「茉莉が俺を求めてくれて、俺も茉莉が欲しいと思った。だから抱いた、それが全てだ」
私の震える唇に、悠がそっと口づける。
「これも……キスだって、俺は好きな相手としかしない。茉莉はどうなの?」
「そんなの、私だって……」
悠に私のはじめてを貰って欲しかった。
悠だから抱いて欲しいと思った。
「知り合った期間なんて関係ないよ。理屈じゃない、飛行機で綺麗な泣き顔を見た瞬間、俺は君に落ちたんだ」
「私も……」
彼と出会ってからの2日間が、フラッシュバックみたいに蘇る。
ハンカチを差し出されたあのとき、綺麗な笑顔を見たあの瞬間、私は悠に落ちたんだ。
「好き……私、悠が好き」
自然に言葉が溢れ出た。
――けれど……
このタイミングで恋を教えるなんて、神様はイジワルだ。
私には望まぬ未来が待っている。
来週には好きでもない相手に抱かれるかもしれないのだ。
もっと早くに知り合いたかった。
恋人として未来を語れる関係になりたかった……
私はスンと鼻を啜ると身体を起こす。
「最後にいい夢を見ることができました。素敵な思い出を……ありがとう」