夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
悠が私を振り返る。
「茉莉、もう大丈夫だ。俺がお父さんの会社も君も助けてみせるから、もう他の男と結婚だなんて言わないで」
「ちょっと待ってくれ! 勝手に話を進めてもらっては困る!」
声を荒げた犬飼を、悠がキッと睨みつけた。
「おたくは『宝生フーズ』さんとはまだ正式な契約を交わしていないですよね。私どもが宝生さんとビジネスの話をするのを止める権利など、あなたには無いですよ。それに……」
悠は私の腰を抱き、犬飼に向かって口角を上げてみせる。
「彼女は俺の恋人だ」
──恋人!?
「色々調べさせていただきました。ホステスの愛人や認知済みの子供までいるような人に、茉莉を渡すわけがない」
――愛人? 子供!?
わなわなと口元を震わす犬飼とざわつくギャラリーを残し、私たちは会場を後にした。
今からホテルの一室で仕事の話をするという。