夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

「臣海、先に行ってて」
「ああ、わかった」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」

 悠に言われて父と並んで歩き出そうとする久遠CEOを、私が呼び止めた。

「久遠CEO、挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくし新宿店でフロントクラークをさせていただいております、宝生と申します。CEOのことは本店でお顔を拝見したことはあるのですが、こうして近くでお会いするのははじめてで……」

「そこそこ近くにいたことはあったけどね」

 CEOがニッと口の端を上げる。

「宝生茉莉さん、久しぶり」

 ――んっ?

 意味がわからず首を(かし)げると、彼がブハッと吹き出した。
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