夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
「一週間前のニューヨーク、ホテルのバーのカウンター」
「えっ……」
「君がカクテルで酔っ払っているのを、カウンターの隅から見ていたよ」
「ええっ!」
隣の悠も吹き出したところで、ようやく私も気がついた。
あの日カウンターで悠と親しげにしていた客……あれは久遠CEOだったのだ。
私服だし髪もワックスで固めていなかったし遠かったしでまったく気づいていなかった。
――だってあの時は悠のことばかり気になっていたから。
失礼を平身低頭謝ると、CEOは気さくに笑って去っていった。
久遠CEOと父を先に向かわせると、悠は私の手を引いて人気のない廊下の隅に向かう。
そこで私をキツく抱きしめた。
「はぁ〜っ、間に合った」
大きく息をつく悠を、私もぎゅっと抱きしめる。
けれど再会を手放しでは喜べない。彼には聞きたいことがありすぎる。