夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

 その家庭環境は複雑だ。

『株式会社乙羽』社長である悠の父親は女性関係にだらしなく、正妻を病気で亡くしてすぐに愛人の1人を妻として家に迎え入れている。

 そして生まれたのが悠だった。

 父親と亡くなった前妻の間には息子がいて、それが悠の5歳上の義兄。

 義兄は父親を嫌って大学から家を出て、そのまま外資系企業に就職。
 実家とはほぼ絶縁状態になっている。

 父親は悠の母親を正妻にしたあとも新しい愛人を持ち、夫婦仲は冷めきった状態。

 悠はそんな両親に反発し、大学を卒業してから単身渡米。そのままニューヨークに住み続けていたのだという。

『両親は俺に会社を継げって言い続けていて。だから言ってやったんだ。俺みたいに愛人の子を作って継がせればいいじゃないか……って』

 悠が眉尻を下げながら切なげに言う。
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