夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

「茉莉、泣いてるの?」
「えっ?」

 家族のことを考えていたら、知らずに涙ぐんでいたらしい。

 悠と一緒に住めるのは嬉しいけれど、大好きな家族と離れることが少し寂しくもある。

「はい、どうぞ」

 悠が立ち止まると、私の目の前に白いハンカチを差し出してきた。
 
「新品だから綺麗だよ」
「ふふっ」

「えっ、何かおかしい?」
「ううん、私のハンカチ王子は相変わらず素敵だなって思って」

 途端に悠は目を細め、私の頬にキスをする。

「俺、あのときハンカチを持っててよかったよ」
「うん……本当に」

「今度茉莉が泣くとしたら……俺との結婚式かな」

 感動して、嬉しすぎて、なんだか無性に泣きたくなる。

「……うん、そうだね」

 私は白いハンカチで涙を拭うと、彼と肩を並べて歩き出した。

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