夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜
とにかく私は大好きな姉と健二さんに幸せになってほしいし、こんなことで別れを選んでもらいたくないのだ。
――でも、そんな2人が理不尽な別れを受け入れなくてはならないほど、お父さんの会社は崖っぷちの状態で……
私が憧れのホテルに就職し、通勤に便利なアパートで気楽な一人暮らしをしているあいだも父は金策に走り回っていた。
それを近くで見ていた姉は、悩んだすえ自分が犠牲になることを決めたのだ。
考えただけで胸が痛くて苦しくて、申し訳なさと後悔でいっぱいになる。
――今度は私の番だ。
「……私が結婚するよ」
「「えっ!?」」
父と姉が同時に声をあげた。
「そのビジネスホテルの社長さんと、私が結婚する」
私は黒髪ストレートロングで姉はブラウンのゆるふわロングと髪型や色が違うものの、同じぱっちりとした目鼻立ちと低めな身長から、昔から双子みたいだと言われることが多かった。
姉が容姿で選ばれたとしたら、私でも問題ないはずだ。
それに犬飼さんは若い子好きらしい。だったら姉より若い26歳の私のほうが喜んで受け入れられるのではないだろうか。