竜王太子の生贄花嫁を拝命しましたが、殿下がなぜか溺愛モードです!?~一年後に離縁って言ったじゃないですか!~
〇〇に加担せず、種族の違う竜人と同じ大陸に住むことを受け入れていたヘンデルの姿勢を竜王は好意的に捉えたらしい。
その後、ヘンデルとシェーンベルグは条約を結び、ヘンデルの後ろ盾にシェーンベルグがつくこととなった。これにより、〇〇はヘンデルへの攻撃をやめざるを得なかった。こうして、三国の争いは終わりを告げた。
ただ、条約を結ぶ際、竜王はヘンデルにある条件をつきつけたという。それは条約が結ばれている期間、神の加護を持つ者を、竜王族の妻として差し出すことだった。
シェーンベルグには、竜人たちが信仰しているシンボルと呼ばれる大きな泉がある。生まれた子供はみな、その泉の水を浴びる風習が存在するようだ。竜王はその泉を、聖魔法で聖水にしてもらおうと考えた。加護のある水の存在は、竜人からしてもありがたいに違いない。
さらに、ヘンデルの女性は美しい。
泉の管理と美しさを目的とした条約を、国の平和のためにヘンデルは受け入れることにした。それからずっと、シェーンベルグの王太子が結婚適齢期になるたびに、ヘンデルは加護持ちの娘を送り続けている。
強国の正妃として迎えられると思えば、決して悪い話ではない。しかし、シェーンベルグに嫁いでいった娘の話で、その後いい噂はひとつもなかった。正妃というのは名ばかりで、泉の管理のほかにもたくさんの仕事を任せられ、どんなに綺麗な娘でもまるで奴隷のように扱われている。その様子を見て、竜王たちは楽しんでいる――なんて黒い噂がいつしか広まり、王太子の妻に選ばれた者は〝生贄〟と呼ばれるようになった。
「エルナの結婚相手は、次期竜王であるルードヴィヒ様だ。お前も名前くらい聞いたことがあるだろう?」
「ルードヴィヒ様って、歴代の王太子の中でもいちばん色男って噂じゃない。よかったわねエルナ。あなたにはもったいないくらいのお相手よ」
父と母から名前を聞いて、冷静だったエルナの手が僅かに震えた。
(……ルードヴィヒ。知らないはずない。彼のよくない話は、ずいぶん前からヘンデルで噂されていたもの)
ルードヴィヒ・シェーンベルグ。シェーンベルグの王太子であり、最強と呼ばれる竜王族の血を引く男。彼はとても美しい顔立ちをしているが、中身は冷徹冷酷で、血も涙もない恐ろしい次期竜王だと世間で囁かれていた。妻にされたら、一生奴隷として虐げられると――。
その後、ヘンデルとシェーンベルグは条約を結び、ヘンデルの後ろ盾にシェーンベルグがつくこととなった。これにより、〇〇はヘンデルへの攻撃をやめざるを得なかった。こうして、三国の争いは終わりを告げた。
ただ、条約を結ぶ際、竜王はヘンデルにある条件をつきつけたという。それは条約が結ばれている期間、神の加護を持つ者を、竜王族の妻として差し出すことだった。
シェーンベルグには、竜人たちが信仰しているシンボルと呼ばれる大きな泉がある。生まれた子供はみな、その泉の水を浴びる風習が存在するようだ。竜王はその泉を、聖魔法で聖水にしてもらおうと考えた。加護のある水の存在は、竜人からしてもありがたいに違いない。
さらに、ヘンデルの女性は美しい。
泉の管理と美しさを目的とした条約を、国の平和のためにヘンデルは受け入れることにした。それからずっと、シェーンベルグの王太子が結婚適齢期になるたびに、ヘンデルは加護持ちの娘を送り続けている。
強国の正妃として迎えられると思えば、決して悪い話ではない。しかし、シェーンベルグに嫁いでいった娘の話で、その後いい噂はひとつもなかった。正妃というのは名ばかりで、泉の管理のほかにもたくさんの仕事を任せられ、どんなに綺麗な娘でもまるで奴隷のように扱われている。その様子を見て、竜王たちは楽しんでいる――なんて黒い噂がいつしか広まり、王太子の妻に選ばれた者は〝生贄〟と呼ばれるようになった。
「エルナの結婚相手は、次期竜王であるルードヴィヒ様だ。お前も名前くらい聞いたことがあるだろう?」
「ルードヴィヒ様って、歴代の王太子の中でもいちばん色男って噂じゃない。よかったわねエルナ。あなたにはもったいないくらいのお相手よ」
父と母から名前を聞いて、冷静だったエルナの手が僅かに震えた。
(……ルードヴィヒ。知らないはずない。彼のよくない話は、ずいぶん前からヘンデルで噂されていたもの)
ルードヴィヒ・シェーンベルグ。シェーンベルグの王太子であり、最強と呼ばれる竜王族の血を引く男。彼はとても美しい顔立ちをしているが、中身は冷徹冷酷で、血も涙もない恐ろしい次期竜王だと世間で囁かれていた。妻にされたら、一生奴隷として虐げられると――。