クールな自称保護者様も燃える恋情は消せないようです
私は手足が震えるのを感じていた。
もし手遅れだったら、私もあの煙と炎の中に取り残され命を落としていたかもしれないのだ。
煙の臭い。視界の悪さ。息苦しさ。意識が遠のく感覚。
思い出してもぞっとなる。
あの時お兄ちゃんに救われたことは、どれほどの幸運だったか。
お兄ちゃんは、昔と同じように私を守ってくれたんだ。
そして、さらに命を張って多くの人を助けているんだ。
なんてすごいんだろう。
私なんか、どう背伸びしたって並ぶことはできない。
お兄ちゃんにとって、しょせん私はいつまでも子どもなんだ。
好きにならずにはいられない。
憧れている。どうしようもなく惹かれてしまう。

お兄ちゃんを忘れることなんて、どうやってもできないよ……。

「下がって! もっと下がって!」

消防車はさらに台数を増し、たくさんの消防士が駆け回り、さらに大きな騒ぎとなっている。
私たちはなかば追い払われるようにされて野次馬の群れの中に溶けこんだ。
人の頭が邪魔で、見えにくくなる。

「いこっか」

もう飽きたのか、本田くんが私の手を引いた。
後ろ髪引かれる思いの私とは逆に、腹がへったねと本田くんが暢気に言った。

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