クールな自称保護者様も燃える恋情は消せないようです
バタン、と扉を閉め、鏡の前の自分を見つめる。
茶髪にピアスもいくつも開けた女の子。
確かにお兄ちゃんが知っている以前の私ではない。
だからって…。

子どものように唇を引き結んでいる顔から涙が零れ落ちた。
浮気されたショックの傷も言えないまま、大好きなお兄ちゃんにあんな風に言われるなんて……。

どうしようもない男だったのは解かっている。
顔が好みってだけで、ナンパから付き合った男だ。
一年も持たずに切り替わる元彼たちは、みんなそういう男ばかりだった。

でもそれは、元はと言えばお兄ちゃんのせいなんだから……。

お兄ちゃんはいつも大人で、たった四年の差がいつも私にはとても大きく感じられた。
いつだって、精一杯背伸びしていた。
でもお兄ちゃんは、追いついたと思ったら遠くに行ってしまう。
ついには遠くの都会で消防士になって、もう私のもとには帰ってこなくて……。

私はずっと、お兄ちゃんのことが好きだった。
今だって、好きだった。

背伸びし過ぎて変な方向に育っちゃったのは自覚している。
いつもくだらない男に言い寄られて付き合うのも、お兄ちゃんと真逆の人を好きになって、お兄ちゃんを諦めようと思ったからだ……。

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