親にも妹にも婚約者にも夫にも恵まれなかった私ですが、公爵家令息に溺愛されて幸せになるようですよ?


 私の婚約者であるナルシスト=ダメ=ナイトリーです。

 年齢は、私たちより2つ年上の14歳。
 淡い金髪のストレートな短髪と、緑色の目という王族カラー、そしてちょっと太い眉が特徴的な中性的な顔立ちの彼は、このナイトリー王国の第二王子です。

「ナル様ぁ、お姉さまが私をいじめたの!」
「よしよし、ネッティー可哀想に。キャロライン、どうして何度もそんな酷いことをするんだ!」

 皆様、分かりましたね。
 この男も残念人間ラインナップの一人です。

 ネタミーニャは、黒髪ツリ目で、母譲りの11歳とは思えないメリハリボディだけが自慢の頭空っぽ女なのです。
 そんなネタミーニャに、もてはやされながら腕に絡みつかれ、胸を押しつけられるのが、この残念男の至福の瞬間なのです。

 絡みつく二人を見ながら、一応王族でもある婚約者が誕生日にやってくるということでおめかしをしていた私は、長いため息をつきます。

「本当に、どう見ても泥をぶつけられて虐められているのは私なのに、この男の目には何が見えているんでしょう。乳か」
「そ、そうやってすぐに言い返す! そういうところが生意気なんだ!」
「そうよそうよ! お姉さまは可愛げがないわ!」

 乳しか目に入っていないと言われて、流石に残念男も顔を赤くして怒っています。

 私はそんな二人を横目に、室内に戻ることにしました。

「ど、どこに行くんだ!」
「そうよ、どこに行くの。話は終わってないわよ!」
「私からお二人に対して話はありません。どうぞお好きなだけ、いつもどおり不貞を働いていたら良いのではありませんか。野生の猿が」

 私の言葉に、二人は青褪めた後、生意気だのそんな事実はないだのワイワイ騒いでいます。

「二人が庭のその辺りや本邸のその陰、第三客室、王宮のそちら様の部屋で散々濃厚な口付けをしているのは既に存じ上げています」
「なんでそこまで詳細に!?」
「さあ、なんででしょうね。ねぇ、ネタミーニャ」

 ネタミーニャは私の視線を受けて、青筋を立てて震えています。
 場所については、毎回ネタミーニャ本人から報告を受けているので知っているのです。
 全く、気持ち悪いったらありゃしない。

「まあこういう関係もそろそろ潮時かもしれませんね」
「な、な、な……」
「ど、どういう意味ですの……」
「どういう意味でしょうねぇ」

 私はもう一度ため息をつくと、騒ぐ二人を無視して、そのまま自室に戻りました。

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