親にも妹にも婚約者にも夫にも恵まれなかった私ですが、公爵家令息に溺愛されて幸せになるようですよ?
2 実の父に殴られました
夕方、残念親父に殴られました。
女の顔を殴るとは、本当に残念な親父です。
「……痛」
「お前はナルシスト殿下になんということを言うんだ!!」
残念親父の背後では、ネタミーニャとその母ソネミーニャがニヤニヤ笑っています。
「はあ、またこの展開ですか」
「なんだその態度は!!」
この残念親父は、よくもまあ飽きもせずに同じような反応をするものです。
何かある度に、私だけを一方的に責めたてて、三人の仲を深める。
私が出ていこうとしても、それはそれで許さない。
私という犠牲者がいないと、この三人は纏まることができないのでしょうね。
「まあいいのです、こういう展開も、今日で終わりなので」
「はっ!? 貴様、何を企んでいる!?」
娘に向かってとうとう貴様ですか。
本当に、これだからこの残念親父は……。
私がげんなりしていると、後ろから執事が残念親父に声をかけました。
「旦那様」
「なんだ、今は忙しい!」
「大旦那様と大奥様がいらっしゃっています」
「なんだと!?」
驚いているお父様に、扉の方から声がかかります。
「オロカーノ君」
「お義父様……!? ど、どうしてここに……客間へ案内します!」
「これはどういうことかな」
今の扉近くに立っていたのは、母方のお祖父様とお祖母様です。