半径3mの世界で

階下の無精髭

目が覚めると、もう昨日の夜などどこにもないほど眩しい朝が外に広がっていた。

今日は一日、快晴だそうだ。

残念。仕事です。

会社から出ないオフィスレディに晴れも雨も関係ない。

それでも清々しい天気は、昨日の暗い気持ちを明るくさせることには成功したみたいだ。

「よーっし明日は休みだ、気合い入れていっちょ働くかぁっ!」

昨日の美容液のおかげでそこまで化粧ノリは悪くない。

OLメイクをして、出陣。

今日は気合い入れて、いつもよりほんのちょっと早めに家を出た。

カンカンカンカン…

階段を降りて、歩きだす。


バタンガチャリ。





音がしたので何気なく振り向くと、ちょうど家から出たばかりのおじさんだった。

ヤバッ目が合っちゃったよ。

髭を伸ばしっ放しで目付きが悪い。

なんとなく怖かったので会釈をして慌ててその場を立ち去る。

あー怖かった。

どうやら私の真下に住んでるらしい。

作業着を着てたから、おそらく工事現場で働いてるのだろう。

やだなぁ。あんな怖い人が下に住んでたなんて知らなかった。

引越のとき挨拶しなかったもんなぁ。
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