半径3mの世界で
目薬が落ちたすぐ近くに、あたし好みのかっこいい男性が写っていた。

鼻が高くて、彫りが深くて、ちょっとアッシュっぽい色に落とした髪は首周りを外ハネさせてる。

タレ目でもツリ目でもない瞳は、自信に溢れている。しかも瑞々しい潤いをたたえていた。

(こんな彼氏がいたらなぁ…!)

さっきとは違う種類の溜め息を漏らし、現実に戻る。

(…でも、こんな人とどう知り合うっていうのよ。それにこんだけ顔がよけりゃ、きっと彼女なんていくらでもできるわよ…)


…でも、こんな美青年がほんとうに彼氏ならなぁ…


未練がましく彼を見つめていたが、止めた。

(明日も仕事だし、もう7時だし。帰ろう)


…正直、家には帰りたくないのだが。


冷めたコーヒーを飲み干し、外へ出た。




ヒュウ




「…寒い」



忘れてた。季節は秋も終盤の11月なのだ。夜は冷えるに決まってる。


「…早く帰ろ」
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