半径3mの世界で
カンカンカン…

2階建てのアパートは今どき金属製の階段で、ヒールの音がよく響く。
始めは気を付けてそうっと上がってたけど、最近になってやめた。深夜の帰宅じゃないんだし。
…それに、これは牽制も兼ねている。

コツコツコツ…ガサガサ…ガチャリ。

「…ただいまっと」

ただいまを言う相手なんていないのだけれど、言わないと帰った気がしない。
いつまでも返らない「おかえり」など待たずに電気をつけ、一気に明るくなった部屋を見渡す。

「やっぱり酷いわこりゃ。20代女子の住む部屋じゃないわね」

あたしの部屋は、一言で言うと…




………




雑、だった。




繁雑とか雑多とか雑然とか、そういうの全部ひっくるめて


雑。


だから、6畳のワンルームがこんなに狭く感じる。

毎日この部屋を見る度に片付けたい気持ちは生まれる。
けれども面倒臭がりな性格のうえに、誰が来るわけじゃないし…といつも最後は開きなおってしまうため、結局いつまでも雑な部屋だ。


あぁ、ここでも悪循環。



どんだけ女の子サボってんだろう、あたし。
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