交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
優しく重ね合わせ、ひと呼吸おいてから離す。驚きと戸惑いがない交ぜの表情をした茉莉花は、ぎこちなく目を逸らした。
「そんな顔するな」
「そんなって、どんな顔ですか」
チラッとだけ吉鷹を見て、またすぐに視線を逃がす。
「初めてキスしたみたいな」
「……初めてですから」
茉莉花は目ばかりか、顔まで逸らしてボソッと呟いた。
「え?」
「今の、ファーストキスなんです」
海風が茉莉花の髪をかき乱し、赤くなった耳を暴いて通り抜けていく。
初心な反応の理由を知り、思いがけず鼓動が不規則な音を立てた。
「……二十七歳にもなってって思いますよね」
唇をわずかに尖らせ、自虐気味な横顔が、吉鷹の目に健気に映る。